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2025.09.15

記憶の扉をひらく場所 博多町家ふるさと館

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記憶の扉をひらく場所 博多町家ふるさと館

旅の途中、にぎやかな通りの喧騒から、ふと静けさを求めて脇道に入ることがあります。
目を引くわけではないけれど、なぜか心をとめてしまう、そんな佇まいの建物に出会う瞬間です。 控えめな看板、時の流れをまとった木の扉。そこには、そっと佇む確かな存在感があります。

「博多町家ふるさと館」は、まさにそんな忘れられた風景が眠る場所。
観光マップには描かれないけれど、博多のまちに息づいてきた記憶、 人々の暮らし、祭りの熱気、手仕事のぬくもりが、ここに静かに息づいています。

時を越えてつむぐ ふるさと館の30年の軌跡

静かな町家のたたずまい

静かな町家のたたずまい

1995年に開館し、今年で30周年を迎えた博多町家ふるさと館。博多祇園山笠で知られる櫛田神社のすぐそばに佇むこの施設は、明治中期の町家を移築・保存した建物を活用し、地域文化の継承に取り組んできました。

館内は、「展示棟」「町家棟」「みやげ処」の三つのエリアに分かれており、博多の暮らし、祭り、工芸の三本柱を軸に、地域文化を立体的に伝える構成となっています。

かつての商家の暮らしを再現

かつての商家の暮らしを再現

梁が重なり合う壮麗な吹き抜けの天井

梁が重なり合う壮麗な吹き抜けの天井

「ふるさと館の建物は、もともと博多織の商家でした。今では文化施設として、当時の暮らしや伝統工芸を後世に伝える役割を担っています。」そう語るのは、館の運営をされている五反田さん。施設管理にとどまらず、地域との連携や文化継承の取り組み全般を担っています。

手入れの行き届いた中庭が訪れる人を迎える

手入れの行き届いた中庭が訪れる人を迎える

三つの軸でひらく“まちの文化”

路面電車が走る時代の福岡。懐かしいまち並みを再現した精巧なジオラマ

路面電車が走る時代の福岡。懐かしいまち並みを再現した精巧なジオラマ

ふるさと館が伝えているのは、特別な歴史だけではなく、誰かが日々を生きた証です。

「暮らし」の展示では、昭和初期に使われていた生活道具が、昔の博多の生活を物語ります。竹で編まれたかご、煤けた鉄のやかん、手仕事の跡が残る木製の家具。それぞれが、かつての台所や仕事場、縁側での時間を教えてくれます。

かつての縫製学校で大切に使われてきた足踏みミシン

かつての縫製学校で大切に使われてきた足踏みミシン

靴を脱ぎ、畳に足を踏み入れたときに感じるような、懐かしくもやさしい空気。それは、昔を生きたある家族が笑い、暮らしを営んでいた記憶の断片なのです。

博多祇園山笠を360度で体感できるVRコーナー

博多祇園山笠を360度で体感できるVRコーナー

映像と実物で感じる博多祇園山笠。会場の熱気までも伝わるシアタールーム。

映像と実物で感じる博多祇園山笠。会場の熱気までも伝わるシアタールーム。

どんたくの開催風景。細部まで再現された人形たちが物語を紡ぐ

どんたくの開催風景。細部まで再現された人形たちが物語を紡ぐ

「祭り」や「工芸」も、かつての暮らしと切り離せない、博多の大切な風景です。館内では、博多織などの伝統工芸の実演が行われ、訪れた人々がその技に静かに見入っています。

圧巻の大織機が今も息づく博多織の世界

圧巻の大織機が今も息づく博多織の世界

町家棟に足を踏み入れると、時折、機(はた)の音が静かに空気を揺らします。

職人の手が丹念に絹糸を織り込むたびに、やわらかなリズムが響き、艶やかな糸が光を帯びてゆく。その音は、まるで明治の町家が、静かに呼吸をはじめたかのようです。

時を越えて、かつての暮らしの息づかいが、目の前でそっとよみがえる瞬間です。

昔ながらの和室で出会う、あたたかい博多張子の手仕事体験

昔ながらの和室で出会う、あたたかい博多張子の手仕事体験

博多人形や博多張子の体験では、細やかな筆使いや表情づくりの工程を間近に見ながら、自ら制作して持ち帰ることができます。歴史ある技を教わりながら指先に集中する時間の中で、自分との静かな対話を楽しみます。

「ふるさと館の魅力は三つあります。一つ目は懐かしい暮らしに出会えること。二つ目は、博多の祭りや工芸を知れること。そして三つ目は、町家という空間の中で、それらを“体験”できることです」と五反田さんは教えてくれました。

人が集い、記憶が生まれる場所

鮮やかな鳥瞰図が迎える館内の観光案内スペースは海外の方も旅の始まりに活用している

鮮やかな鳥瞰図が迎える館内の観光案内スペースは海外の方も旅の始まりに活用している

静かな館内には、いつも人の気配があります。

「海外の観光客の方も多く利用されていますし、地元の方にとっても気軽に立ち寄れる場所にしていきたいと思っています。展示を充実させるだけでなく、ふるさと館全体としての趣深さを大切にしています」五反田さんは、そう語ります。

懐かしの縁日風情を映す「のぞきからくり」

懐かしの縁日風情を映す「のぞきからくり」

のぞいた先には、当時の子どもたちの記憶に残るにぎやかな露店の風景

のぞいた先には、当時の子どもたちの記憶に残るにぎやかな露店の風景

30年を超えて愛されてきたのは、「また来たくなる」理由があるから。地元の小学生が昔の遊びを体験したり、博多祇園山笠の関係者がふらりと立ち寄ったり。さらには、毎年恒例の餅つき行事や、消防団による「まといぶり」の披露など、地域と一体となった行事も開催されています。

昔ながらの電話で学ぶユニークな博多弁講座。ことばを通して“まちの空気”にふれる。

昔ながらの電話で学ぶユニークな博多弁講座。ことばを通して“まちの空気”にふれる。

近年、ふるさと館では次世代への文化継承にも力を入れています。

2025年からは、小学3年生〜6年生を対象とした「博多っ子クラブ」がスタート。月1回の講座を通じて、博多の歴史や文化を楽しく学べる場を提供しています。

「まず歴史ある町家の中で博多の文化を感じていただき、その後に近隣の神社やお寺を巡っていただくのもおすすめです。伝統工芸体験も行い、ぜひたくさんの思い出をつくっていただきたいです」と五反田さん。

文化の記憶を、未来へつなぐ新たな扉

和の趣に包まれたカフェエリア。日本茶や和菓子とともに、静かな時間を楽しめる場所

和の趣に包まれたカフェエリア。日本茶や和菓子とともに、静かな時間を楽しめる場所

2025年4月26日にリニューアルオープンしたみやげ処の「hakatakara(ハカタカラ)」

ふるさと館が30周年を迎えた2025年春。新たな挑戦として、みやげ処が「hakatakara(ハカタカラ)」という名でリニューアルオープンしました。この名には、「ここから博多の宝=文化を、次の時代へ届けたい」という願いが込められています。

リニューアル後のhakatakaraでは、博多土産を購入できるだけでなく、日本茶と和菓子を味わえるカフェや観光案内、さらに折り紙や書道など、日本文化に触れられる体験スペースも備わっています。

博多伝統工芸の雑貨や限定のお土産が並ぶ楽しい空間

博多伝統工芸の雑貨や限定のお土産が並ぶ楽しい空間

博多町家ふるさと館は、「博多の文化を守り、未来へつなぐ拠点」として、これからも地域とともに歩みを進めていきます。

五反田さんは、こう語ります。「文化は、展示して終わりではありません。見て、感じて、誰かに話したくなるような体験こそが、記憶に残る。博多町家ふるさと館は、そんな“入り口”になれたらと願っています」

旅の中で、少し足を止めてみると、知らなかった“ふるさと”が、そこにそっと待っているかもしれません。


博多町家 ふるさと館 
電話:092-281-7761 
住所:福岡県福岡市博多区冷泉町6-10 
アクセス:ホテルリソルトリニティ博多より徒歩約9分 
HP:https://hakatamachiya.com/access/ 
 営業時間や休館日についての詳細は上記のリンク先でご確認ください。